森ミスについての雑駁(Gシリーズタイトル以外のギリシャ文字、Fの問題の続き)

ただの雑駁な雑談です。

 

そんなに大層なネタバレでもないですが、『黒猫の三角』のネタバレを含みます。

すべてがFになる』、『笑わない数学者』、『朽ちる散る落ちる』、『四季 冬』、『τになるまで待って』、『彼女は一人で歩くのか?』を未読の人も読まないほうがいいかも。

 

 

 

 

森ミスにおけるGシリーズのタイトル以外のギリシャ文字について

 

森ミスでギリシャ文字といえば、当然Gシリーズのタイトルが思い浮かぶが、じつはひっそりと他にもギリシャアルファベットが登場しているのにお気付きだろうか。

 

例えば『黒猫の三角』に登場する猫の名前デルタは、ギリシャ文字

デルタは小文字がδ、大文字がΔ(三角形じゃ!)。

 

クロネッカのδの似たようなやつに、エディントンのεというのがいる。

 

すべてがFになる』のタイトルの文字は英語のFだが、ギリシャ文字に、Ϝ(小文字はϝ)というのがあったらしい。ディガンマと読む。実は、『すべてがディガンマになる』だったら嫌だな〜。

 

今思いついたんだけど、『すべてがFになる』のFは、15だけじゃなくて、Four Seasons を表していたっていう説とかどうですか? 特にこの思いつきを広げる気力もないので、ここからなにかいい感じの説ができたら教えてください。

 

(追記: 『すべてがFになる』で既に考慮に入れられてる説だと指摘を受けました。ご指摘ありがとうございます。確かに、犀川が「それなら、四季さんは、フォーシーズンズでFだし、道流さんだって、フルでFだよ」と言っていますね)

 

Wシリーズで、ハギリが研究している脳波的なものの名前が、グザイ波。

グザイは、ギリシャ文字のΞ(小文字はξ)。大分配関数とかで使う。小文字のξは、疲れた時にクネっとしたところが一個増えちゃうというのがあるある(誰にも言ったことがないので本当にあるあるなのかは不明)。

 

「子供に関する観測結果は、かなり古いものしか残っていない。およそ、六十年くらいまえのものだ。その当時には、まだ子供が幾らかいたのだ。僕だって、その少しまえに生まれている。しかし、当時はグザイ波については、存在が知られたばかりだった」(『彼女は一人で歩くのか?』より)

 

フィクションの脳波らしい。『彼女は一人で歩くのか?』にしか登場していないが、果たして、再登場することはあるのか!

 

Wシリーズの本部の名前は「ニュークリア」だった。

 

その研究所は、内部では〈ニュークリア〉と呼ばれていた。このニューは、新しいという意味ではなく、ギリシャ文字の「ν」だそうだ。だから何なんだ、と思わなくもない。おそらく、本当のところは核廃棄物の上にいることを自虐的に洒落ているのにちがいない。(同上)

 

νの大文字はΝ。これ、Nとは、別のユニコードが当てはめられてるっぽい。vと紛らわしいっていうあるあるはちょっとベタすぎか。

 

核を意味する英単語nuclearは、ラテン語から派生した単語で、ギリシャ語は関係ないみたい。 #森ミスで学ぶ英単語

 

ユニコードは16進数で表された数字と文字を対応させるものだと認識している。すべてがFになってるU+FFFFはなんの文字なんだろうと思って調べたけど、割り振られてないみたい?

 

「πのような存在かしら」 「パイ? ああ、西之園萌絵の死角のことだね」  構築知性の発展的学習には、それがキーとなる。(『四季 冬』より)

 

萌絵にはπみたいなところがあるらしい。円周率。大文字のΠは、Σで和を表したように、積を表したりする。

 

さて、円周上を運動する物体には、回転の中心から離れる方向へ加速度が作用します。これを一般に、遠心力と呼びますが、その力は、周方向に等速度運動している場合、Rω二乗、すなわち、半径かける角速度の二乗です。(『朽ちる散る落ちる』より)

 

これ、じつは『ωの悲劇』の伏線らしいです。

 

「あ、わかった。お母さんから電話がかかってくるんだ」 「さすが西之園さん。オメガ・イズ・ハイ」(『τになるまで待って』より)

 

これ、じつは『オメガ城の惨劇』の伏線らしいです。

 

他にギリシャ文字の目撃情報があれば、教えてください。

 

 

すべてがFになる』の冒頭の問題と、『笑わない数学者』のビリヤード問題について一言二言

 

すべてがFになる』の冒頭で四季が出す問題は、名古屋大学の1975年度の入試問題をもとにしているらしい。

 

1から10までの数字を二組に分けてごらんなさい。そして、両方とも、グループの数字を全部かけ合わせるの。二つの積が等しくなることがありますか?(『すべてがFになる』より)

 

森先生が1957年の12月7日生まれらしいから、本番の試験は、1976年なはず(だよね?)。前年分の過去問として解いたのかな。

 

 

(1)  1から10までの10個の整数から相異なる5個をとり、その積をa、 残りの5個の積をbとする。α≠bを証明せよ。

 

(2) また,1から10までの10個の整数のうちの相異なる5個の積として表される整数のうちで、√(10!)より小さいものの個数をp、√(10!)より大きいものの個数をqとする。p=qを証明せよ。

 

 

 

Fでは二つに分けるとしか言ってないけど、名大の過去問の方では、5個ずつに分けるらしい。(2)も、別に5個ずつにしなくても問題は成立する上、難易度も特に変わらないので、この条件の存在理由は謎。

 

理系じゃなかったら、知らない記号があるかもしれないので念のため説明。

 

!は階乗を表す記号で、nを自然数として、

 

n!=n(n-1)(n-2)…1

 

として定義されます。

 

例をあげると、

 

5!=5×4×3×2×1=120

 

1!=1

 

(Γ関数という階乗を拡張したものもあって、1/2の階乗的なものも計算できたりします。Γの小文字はγ。キウイですね)

 

ちなみに、問題で出てくる10!は、

 

10!=10×9×8×7×6×5×4×3×2×1

     =3628800

 

らしいですよ。大きいね。

 

四季サーガを70冊とすると、この70冊を並べる場合の数は、70!通り。

これは、観測可能な宇宙の中の原子の個数より大きいらしい(70!は10¹⁰⁰くらいで、観測可能な宇宙の中の原子の個数は、10⁸⁰くらいのオーダらしいですよ。大きいね)。つまり、森ミスを読む最適な順番があると主張するには、原子の個数より多くのパターンと比較しなくてはならない。比較が終わった人がいたら教えてください。

 

「√ 」の説明は省略。

 

以降(2)のネタバレあり。

 

細かい論証は面倒なので書かないけど、適当に5個取ってきて、その積が√(10!)より大きければ、残りの5個の数の積が√(10!)より小さくなるし、逆もまた然りってことですね。こうやって1対1に対応関係を作れるから同じ個数ってこと。気付けば簡単だけど、√ だの!だのが出てきて計算ゴツそうな雰囲気があるからちょっとビビるかも。

 

ビリヤード問題のちょっとネタバレ。

 

5個の数を、その合計が21になるように選べば、1〜10の数を作れた時点でもう正解だってわかる。つまり1〜10を作った時に残りのボールを選べば、21から1~10のそれぞれの数を引いた11から20が作れるから。考え方が少し似てる。

 

このことに気が付かなくても、ビリヤード問題は解けるけどね。

 

 

ビリヤード問題の一般化をすると、

 

n個のビリヤードの玉を、真珠のネックレスのように、リングにつなげてみるとしよう。玉には、それぞれナンバが書かれている。さて、この五つの玉のうち、幾つ取っても良いが、隣どうし連続したものしか取れないとしよう。一つでも、二つでも、n個全部でも良い。しかし、離れているものは取れない。この条件で取った玉のナンバを足し合わせて、1からn²-n+1までのすべての数ができるようにしたい。さあ、どのナンバの玉を、どのように並べて、ネックレスを作れば良いかな?

 

となる。並び方が存在しないnもある。

 

 

次元を一般化するパターンもあるんじゃないかと思った。例えば、球面上に球を均等に置いて、1番近い二つ同士を「隣り合っている」とみなして、隣どうし連続した球をとる……というふうにする。

 

正四面体で4個のビリヤード球で考えたけど、そもそもどの二つも隣り合ってて、超つまらない。

 

5個のビリヤードの球を考えようかなとも思ったけど、頂点が5個の正多面体はないのだった。残念。

 

 

じゃあ、正八面体ならどうなのかしらってことで調べてみたけど、計算が間違ってなければそういうならびは存在しなかった、残念。

 

「隣りどうし連続した球」の定義をもう少し柔軟に変更すればいい問題ができるかもしれない。

 

あとは、2次元の問題の時は、点(0次元)に数を割り振ったのだから、3次元に拡張する時は、ビリヤード球ではなく、ビリヤードを打つ棒に数を割り振って辺(1次元)にすればいいのではというのも思いついた。こっちの方はろくに検証をしていないので、よさそうな問題ができたらご一報ください。

 

それでは、さようなら。

 

 

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